「国が引き取った相続土地を、評価額の最大9割引き(正確には最大約93%引き)で売れるようにする」——財務省が2026年6月に示した方針が話題です。背景には、相続などで国の手に渡った土地(国庫帰属財産)が、一般競争入札にかけてもこれまで1件も売れていないという事情があります。結論から言うと、こうした国有地は一般の人でも買えます。ただし「売れ残った理由」のある土地ばかりです。この記事では、値引きの具体的な仕組み、買い方、買うときの注意点と税金まで、財務省・法務省の一次情報をもとに整理します。
何が起きているのか(要点)
財務省は、国が引き取った相続土地(国庫帰属財産)の処分を進めるため、次のような見直しを検討・実施しています。
令和8年6月17日の財政制度等審議会 国有財産分科会(第68回)の資料1「相続土地国庫帰属財産の評価」で、売れ残っている国庫帰属の土地について、まず評価額から3割引きで売り出し、買い手がつかなければ3か月ごとに1割ずつ引き下げる方針が示されました[財務省 第68回資料]。下限は値引き後価格の1割、つまり当初の評価額の約7%の水準(最大約93%引き)まで下げられるようになります。いきなり9割引くのではなく、需要がないことを3か月ごとに確認しながら段階的に下げる仕組みです。
令和8年2月27日の同分科会(第67回)では、国庫帰属地の処分手続を柔軟にする方針が示されています[財務省 第67回資料]。具体的には、①買い手が隣接する土地の所有者だけの場合や、②買い手が1者のみで予定価格100万円以下の場合は、入札を経ない随意契約で売却できるようにします。あわせて、測量・境界確定や地下埋設物の調査をせずに売る現状有姿売買も導入し、処分までの期間とコストを圧縮します。
※いずれも国の財産処分ルールの見直しで、実施時期や運用の詳細は今後の発表で確定します。本記事は2026年7月時点で確認した方針・資料に基づきます。
なぜ国がそんな土地を持っているのか
国が個人の土地を持つのは例外的に思えますが、相続まわりで次の3つのルートから土地が国の手に渡ります。
| ルート | どういう土地か |
|---|---|
| 相続人がいない(相続人不存在) | 亡くなった人に相続人がおらず、最終的に国庫に帰属した財産 |
| 相続税の物納 | 相続税を現金で払えず、土地そのもので納めた(物納した)もの |
| 相続土地国庫帰属制度 | 2023年4月開始。要らない相続土地を、負担金を払って国に引き取ってもらう制度で国に渡ったもの[法務省] |
とくに3つ目の制度は、地方の使い道のない土地が国に集まりやすく、利用も年々増えています。法務省の統計では、2026年(令和8年)5月31日時点で申請5,545件・国庫帰属2,762件(速報値)に達しました[法務省 統計]。このうち宅地などとして財務局等が引き受けた土地は2026年3月末時点で約1,600件ありますが、一般競争入札にかけても売却に至ったものはゼロでした[財務省 第68回資料]。今回の値引き拡大は、「引き取ったはいいが売れない」土地の出口を作るための見直しといえます。
なぜ・どうやって最大93%も値引きするのか
国有地は本来、不動産鑑定などをもとにした評価額で売られ、安売りはしません。それでも大幅値引きに踏み切るのは、対象の多くが市場で売れ残ってきた「負動産」だからです。
- 地方や郊外にあり、そもそも買い手が少ない
- 接道していない、形がいびつ、原野・山林など使いにくい土地
- 国が持ち続けると管理コスト(草刈り・境界管理・不法投棄対策など)が国民負担として発生し続ける
- 所有者不明土地・管理されない土地を減らす政策目的とも一致する
財務省の資料によると、値引きは2段階で行われます[財務省 資料1(PDF)]。まず、測量や地下埋設物調査をせず、境界不明などのリスクを買主が引き受ける「現状有姿売買」の条件を価格に反映して標準で3割引きにします。それでも買い手がつかなければ、3か月ごとに1割ずつ(値引き後価格を基準に)引き下げていきます。
- 現状有姿売買の条件を反映し、まず3割引きの70万円で財務局のホームページに掲載
- 3か月たって買い手がつかなければ63万円(70万円の1割引き下げ)
- 以後も3か月ごとに7万円ずつ引き下げ:56万円 → 49万円 → 42万円 →…
- 下限は7万円(値引き後価格の1割=当初評価額の約7%)。ここまで下がるのは掲載から2年強かかる計算
つまり「いきなり9割引きの叩き売り」ではなく、需要がないことを確認しながら段階的に下げる仕組みです。あわせて随意契約も使えるようにして、滞留した土地を動かそうという狙いです。
一般の人でも買えるのか・買い方
買えます。国有財産(普通財産)は、原則として誰でも購入を検討できます。主な探し方・買い方は次のとおりです[財務省 国有財産の売却情報]。
- 物件を探す:財務省の国有財産の売却情報や、国有財産の売却情報サイト、お住まいの地域を管轄する財務局・財務事務所の公示物件を確認します。
- 現地と条件を確認:接道・境界・上下水道・用途地域・再建築の可否などを必ず自分で調べます。安い土地ほどここが重要です。
- 入札または申し込み:売り方は主に2つ。一般競争入札(国が定めた予定価格以上で、最高値を付けた人が落札)と、先着順売却(公示された価格で申し込み順に買える)です。
- 契約・代金の支払い:落札・申込後に売買契約を結び、代金を納めて引き渡しを受けます。
財務省の方針では、国庫帰属地は財務局等のホームページに参考価格つきで掲載され、3か月間、自治体の取得要望と一般の買受け要望をまとめて受け付けます。買い手が隣接地の所有者だけの場合や、買い手1者のみで予定価格100万円以下の場合は、入札なしの随意契約で購入できるようになります。特に隣の土地が国庫帰属地になった人にとっては、安く買い増しできるチャンスが広がります。
※すべての国有地が値引きの対象になるわけではありません。段階的な値引きの対象は、売れ残った国庫帰属財産が中心です。
安さに飛びつく前に:売れ残った理由を疑う
9割引きは魅力的ですが、売れ残ったのには理由があります。買ってから後悔しないよう、次の点を確認しましょう。
狙う価値があるケース
- 隣地として自分の土地と一体活用できる
- 資材置場・駐車場・家庭菜園など用途が限定的でよい
- 接道・インフラがあり、再建築や利用が現実的
注意が必要なケース
- 接道なしで建物が建てられない(再建築不可)
- 市街化調整区域・原野・山林で利用が難しい
- 境界不明、上下水道なし、遠隔地で管理しきれない
土地は持っているだけで固定資産税が毎年かかり、草刈りや不法投棄対策などの管理の手間・費用も発生します。出口(再売却)も難しい土地が多く、「安く買えた」が「手放せない負動産を抱えた」に変わるリスクがあります。固定資産税の考え方は 固定資産税の計算 を参照してください。
買うとき・手放すときの税金
値引きで安く買えても、税金は別途かかります。買う側・手放す側それぞれを整理します。
| 立場 | かかるお金 | ポイント |
|---|---|---|
| 買う側 | 不動産取得税 | 取得時に一度。原則「固定資産税評価額 × 税率」。買った値段ではなく評価額が基準 |
| 登録免許税 | 所有権の登記にかかる | |
| 固定資産税 | 毎年かかる。安く買っても評価額ベースで課税される | |
| 手放す側 | 相続土地国庫帰属の負担金 | 国に引き取ってもらう側は、原則20万円〜(宅地・田畑・森林は面積等で算定)の負担金が必要[法務省] |
※「安く買える=固定資産税も安い」ではありません。固定資産税・不動産取得税は購入価格ではなく固定資産税評価額をもとに計算されます。相続まわりの税金は 相続税の基礎控除と節税対策 も参考に。
投資・活用として見たときの現実
「9割引き」は値ごろ感がありますが、割引率の大きさと投資としての旨みは別物です。値引きされる土地の多くは、収益を生みにくく、再売却も難しいものです。利回りを期待する投資というより、隣地の買い増しや特定用途での活用、または地域とのつながりが前提の取得と考えるのが現実的です。空き家・古家とセットで考えるなら 空き家の3000万円特別控除 や マイホーム売却の3000万円特別控除 も押さえておきましょう。
よくある質問
国が売る土地は、一般の個人でも買えますか?
買えます。国有財産(普通財産)は原則として誰でも購入を検討でき、一般競争入札(予定価格以上の最高値で落札)や、公示価格で申し込む先着順売却で取得します。財務省の国有財産の売却情報や各財務局の公示物件で探せます。
本当に9割引きで買えるのですか?
財務省が、売れ残った国庫帰属の相続土地について、まず評価額の3割引きで売り出し、買い手がつかなければ3か月ごとに1割ずつ引き下げ、最大で当初評価額の約7%の水準(約93%引き)まで下げられるようにする方針を示しています(令和8年6月の国有財産分科会)。全物件がいきなり9割引きになるわけではなく、需要がないことを確認しながら段階的に値下げする仕組みです。実施時期・運用の詳細は今後の発表で確定します。
どこで物件を探せますか?
財務省の「国有財産の売却情報」や「国有財産の売却情報サイト」、そして地域を管轄する財務局・財務事務所の公示中物件で確認できます。気になる物件は現地と権利・インフラを必ず自分で調べましょう。
安く買えれば固定資産税も安いですか?
いいえ。固定資産税や不動産取得税は購入価格ではなく固定資産税評価額をもとに計算されます。値引きで安く買えても、毎年の固定資産税や管理費はかかる点に注意が必要です。
安い土地を買うリスクは何ですか?
売れ残った土地は、接道がなく建物が建てられない(再建築不可)、市街化調整区域や原野・山林で使いにくい、遠隔地で管理しきれない、といった理由を抱えがちです。出口(再売却)も難しいため、用途と管理の見通しを立ててから検討しましょう。
まとめ
参考リンク(出典)
本記事は次の公的資料をもとに作成しています(中立・一次情報)。政策の見直しは検討・方針段階の内容を含むため、申請・購入の前に最新の発表をご確認ください。
- 財務省 財政制度等審議会 第68回国有財産分科会(令和8年6月17日)資料/資料1「相続土地国庫帰属財産の評価」(PDF)
- 財務省 第67回国有財産分科会(令和8年2月27日)資料
- 財務省 国有財産の売却情報
- 国有財産の売却情報サイト
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(申請・帰属件数)
- 政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
※本記事は一般的な情報提供であり、税務・不動産の個別アドバイスではありません。購入・申請の判断は財務局・専門家にご確認ください。







