外国人のための日本の税金ガイド

日本で働く・暮らす外国人が支払う税金と手続きの全体像をまとめました。

自分の課税区分(居住者・非永住者・非居住者)の確認、支払う税金の種類、年末調整確定申告のやり方、母国の家族の扶養控除、帰国するときの手続きまで、順番に解説します。

まず確認:あなたの課税区分

日本の所得税は、国籍ではなく「住所」と「滞在期間」で課税のルールが決まります。所得税法では、次の3つの区分に分かれ、区分によって課税される所得の範囲が大きく変わります。

区分該当する人課税される所得の範囲
非居住者 日本に住所がなく、居所も1年未満の人(短期出張・短期滞在など) 日本国内で生じた所得(国内源泉所得)のみ
非永住者 居住者のうち、日本国籍がなく、過去10年以内に日本に住所・居所があった期間の合計が5年以下の人 国外源泉所得以外の所得 + 国外源泉所得のうち日本で支払われた・日本へ送金されたもの
居住者(永住者) 上記以外の居住者(在住5年超の外国人・永住権の有無は無関係) 国内外を問わずすべての所得(全世界所得)
ポイント:「非永住者」は税法上の区分で、在留資格の「永住者」とは別の概念です。日本での通算滞在が5年を超えると、母国での投資収益や家賃収入なども含めた全世界所得が課税対象になります(外国で払った税金は外国税額控除で調整できます)。

就労ビザで日本の会社に勤めて日本に住んでいる人は、入国した年から「居住者」です。日本の税金の基本的なしくみは税金の基礎知識でも解説しています。

日本で支払う主な税金

日本で働く外国人が関係する主な税金は次のとおりです。給与から自動的に引かれるもの(所得税・住民税)と、生活の中で払うもの(消費税など)があります。

税金税率の目安払い方
所得税(国税) 5〜45%の累進課税 + 復興特別所得税2.1%(2037年まで) 給与から毎月源泉徴収。過不足は年末調整・確定申告で精算
住民税(地方税) 約10%(所得割)+ 均等割 年5,000円前後(森林環境税1,000円を含む) 前年の所得に課税。毎年1月1日に住所がある自治体へ、6月から翌年5月に給与天引きなど
消費税 10%(飲食料品などは軽減税率8%) 買い物のたびに価格に含めて支払い
その他 固定資産税(不動産所有者)、自動車税、相続税・贈与税など 該当する人のみ。不動産は外国人の日本不動産取得と税金を参照
住民税は「後払い」に注意:住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されます。来日1年目はほぼかからず、2年目から給与天引きが始まって手取りが減ったように感じるのはこのためです。帰国後に前年分の請求が届くこともあります(帰国するとき参照)。

健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料は税金ではありませんが、給与から合わせて天引きされます(給与の約15%が本人負担の目安)。払った社会保険料は全額が社会保険料控除として所得から差し引かれます。年金保険料は帰国時に一部が戻る制度があります(脱退一時金)。

会社員なら:源泉徴収と年末調整

日本の会社に勤めている場合、所得税は毎月の給与から概算で天引き(源泉徴収)され、12月の年末調整で1年分が精算されます。給与が1か所だけの会社員は、これで所得税の手続きが完結するのが日本の特徴で、多くの人は確定申告が不要です。

毎月
給与から概算で
源泉徴収
11〜12月
扶養・保険料などの
申告書を会社へ提出
12月
会社が年税額を
正しく計算
12月給与
払いすぎ分を還付
(不足なら追加徴収)

年末調整の書類の書き方は年末調整ガイドで図解しています。母国にいる家族を扶養に入れる場合は追加書類が必要です(次のセクション)。1月ごろに会社から受け取る「源泉徴収票」は年収と納税額の証明書で、在留資格の更新やローン審査でも使うため必ず保管してください。

確定申告が必要なケースとやり方

確定申告は、1年間(1月1日〜12月31日)の所得と税額を自分で計算して税務署に申告する手続きです。翌年の2月16日から3月15日(土日の場合は翌平日)に申告と納税を行います。

確定申告が必要になる主なケース

  • フリーランス・個人事業主として働いている(個人事業主の確定申告
  • 会社員で、副業などの給与以外の所得が年20万円を超える(会社員の副業と税金
  • 給与を2か所以上から受け取っている
  • 給与収入が2,000万円を超える(年末調整の対象外)
  • 年の途中で退職し、年末調整を受けずに再就職していない
  • 非永住者・永住者で、国外の所得(配当・家賃収入など)を申告する必要がある

申告した方が得になる(税金が戻る)ケース

申告の手順(e-Tax)

STEP 1
源泉徴収票・控除証明書・
マイナンバーカードを準備
STEP 2
国税庁「確定申告書等
作成コーナー」で入力
STEP 3
e-Taxで送信
(郵送・持参も可)
STEP 4
納付 or 還付
(還付は約3週間〜)

画面の操作手順はe-Taxで確定申告する方法で詳しく解説しています。提出前の抜け漏れは確定申告チェックリストで確認できます。国税庁は英語の手引き(Income Tax Guide)も公開しており、税務署では通訳サービス付きの相談窓口が利用できる場合があります。

マイナンバー:申告書にはマイナンバー(個人番号)の記載が必要です。中長期在留者には住民登録時に付番されています。マイナンバーカードがあればe-Tax送信・還付がスムーズです。

外国人特有の控除・注意点

1. 母国にいる家族の扶養控除(国外居住親族)

母国に住む家族に生活費を送金している場合、要件を満たせば扶養控除(1人あたり38万〜63万円の所得控除)が受けられます。ただし2023年分から、30歳以上70歳未満の国外居住親族は原則として対象外になりました。対象になるのは次のいずれかに該当する場合だけです。

国外居住親族の年齢扶養控除の対象になる条件必要書類
16歳以上30歳未満・70歳以上 生計を一にしていれば対象(年間所得48万円以下) 親族関係書類+送金関係書類
30歳以上70歳未満 留学で出国している 上記+留学ビザ等の書類
障害者である 親族関係書類+送金関係書類
生活費・教育費として年38万円以上送金している 上記+38万円以上の送金を証明する書類
送金の証拠を残す:銀行送金の明細など、親族ごとの送金記録が必要です。現金の手渡しや、代表者1人への一括送金では家族全員分の控除は認められません。

2. 租税条約による減免

日本は多くの国と租税条約を結んでおり、二重課税の調整や、留学生・教授・研修生などの給与・生活費の免税が定められている場合があります。適用を受けるには、給与の支払前に「租税条約に関する届出書」を勤務先経由で税務署へ提出するのが原則です。条約の内容は国によって異なるため、母国と日本の条約を国税庁サイトで確認してください。

3. 外国税額控除(二重課税の調整)

全世界所得が課税される居住者(永住者)が、国外の所得について外国でも税金を払った場合、外国税額控除により日本の所得税から一定額を差し引けます。確定申告での手続きが必要です。

日本を離れるとき(帰国・出国)の手続き

年の途中で日本を離れて非居住者になる場合、税金の「精算」が必要です。出国前に済ませておかないと、還付が受け取れなかったり、後から請求が届いたりします。

出国前のチェックリスト

  • 所得税の精算:会社員は出国時に会社が年末調整。それ以外は出国前に確定申告(または納税管理人を届け出て翌年申告)
  • 納税管理人の届出:出国後の申告・納税・還付の受け取りを代行する人(日本に住む個人・法人)を税務署に届け出る
  • 住民税の精算:1月1日に日本に住所があると、その年の住民税は出国後も全額かかります。給与からの一括徴収か、納税管理人経由で納付
  • 脱退一時金の請求準備:年金の加入期間が6か月以上あれば、出国後2年以内に請求可能

年金の脱退一時金と税金の還付

厚生年金・国民年金に6か月以上加入した外国人が日本を離れる場合、脱退一時金を請求できます(計算上限は現在5年=60か月。2025年の年金制度改正で将来的に8年へ引き上げが決まっていますが、施行日は未定です)。

脱退一時金(厚生年金分)の支払時には20.42%の所得税が源泉徴収されますが、出国前に納税管理人を届け出ておき、「退職所得の選択課税」の還付申告をすると、源泉徴収された税金の大部分が戻ってくるのが一般的です。手続きの流れは次のとおりです。

出国前
納税管理人の
届出書を税務署へ
出国後2年以内
日本年金機構へ
脱退一時金を請求
受給後
納税管理人が
還付申告
還付
源泉徴収20.42%の
大部分が戻る
脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録は消滅します。母国が日本と社会保障協定を結んでいる場合、加入期間を通算して将来の年金につなげられることがあるため、長期滞在した人・再来日の可能性がある人は受け取る前に比較検討してください。

相続や不動産など、出国後も日本に資産が残る場合の税金は外国人と相続税外国人の日本不動産と税金で解説しています。

富裕層・投資家向けのポイント

まとまった資産を持って日本へ移住する場合は、一般の会社員とは別の論点があります。

  • 非永住者の5年ルール:来日から通算5年以内は、海外の投資収益は日本へ送金しない限り課税されないのが原則です
  • 出国税(国外転出時課税):対象資産1億円以上で日本を離れる際の含み益課税。就労系在留資格の滞在期間は判定から除外されます
  • 相続税・贈与税の特例:就労系の在留資格で居住する外国人が亡くなった場合、海外資産は原則として日本の相続税の対象外です
  • 資産の報告義務:居住5年経過後は国外財産調書(国外財産5,000万円超)の提出義務やCRSによる口座情報の自動交換の対象になります
  • 起業家向け:経営・管理ビザは2025年10月16日から資本金3,000万円以上・常勤職員1名以上等に厳格化されました

詳しくは外国人富裕層の日本移住と税金で、出国税と在留資格の関係、金融・資産運用特区、補助金の活用まで解説しています。

よくある質問

Q. 留学生のアルバイト収入にも税金はかかりますか?

A. 原則としてかかりますが、母国と日本の租税条約に「学生条項」がある場合、生計・教育のためのアルバイト収入が免税になることがあります(例:中国からの留学生)。適用には勤務先経由で「租税条約に関する届出書」の提出が必要です。条約の内容は国ごとに異なるため、国税庁サイトか税務署で確認してください。

Q. 帰国した後に住民税の請求が届いたのはなぜですか?

A. 住民税は前年の所得に対して、その年の1月1日に住所がある自治体が課税するためです。例えば3月に帰国しても、1月1日時点で日本に住んでいれば前年分の住民税は全額支払う必要があります。出国前に給与からの一括徴収を会社に依頼するか、納税管理人を届け出て納付します。

Q. 母国の家族への送金は税金の控除になりますか?

A. 送金そのものではなく、送金先の家族を「扶養控除」の対象にできる可能性があります。親族関係書類と送金関係書類が必要で、30歳以上70歳未満の親族は留学・障害者・年38万円以上の送金のいずれかに該当する場合のみ対象です。家族ごとに送金記録を残すことが重要です。

Q. 確定申告をしないとどうなりますか?

A. 期限までに申告しないと無申告加算税や延滞税が上乗せされます。また、納税証明書や課税証明書は在留資格の更新・変更や永住許可の審査資料になるため、納税状況は在留手続きにも影響します。期限に遅れても自主的に申告すればペナルティが軽くなるので、早めに税務署へ相談してください。

Q. 日本語が苦手でも確定申告できますか?

A. 国税庁が英語の手引き(Income Tax Guide)を公開しているほか、確定申告期間中は一部の税務署・会場で通訳を介した相談ができます。東京国税局などは電話の英語相談窓口も設けています。申告書の作成自体は日本語ですが、手引きを見ながら「確定申告書等作成コーナー」で入力すれば計算は自動で行われます。

参考リンク(出典)

※ 本ページは一般的な情報提供であり、個別の税務判断は税務署・税理士など専門家にご相談ください。制度・数値は改正されることがあります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。