外国人・海外資産と相続税|納税義務者の区分と課税範囲をやさしく解説

外国人・海外資産と相続税|課税範囲はどう決まる?

海外に資産がある人や、外国籍の家族がいる人、海外赴任・移住が関わる相続では、「日本の相続税がどこまでかかるのか(課税範囲)」が問題になります。日本の相続税は国籍だけで決まるのではなく、被相続人・相続人それぞれの「住所」「在留期間」「財産の所在」の組み合わせで、課税対象が「全世界の財産」か「国内財産のみ」かが変わります。この記事では、納税義務者の区分と課税範囲、短期滞在外国人に関する2017年の改正、所得税の「非永住者」制度までを、中立的に整理します。

相続税の課税範囲は「住所・在留・財産の所在」で決まる

相続税では、財産を取得した相続人が次のどの区分にあたるかで、課税される財産の範囲が変わります。日本国籍の有無は判定要素の一つですが、それだけで決まるわけではありません。

2つの課税範囲

全世界課税:日本国内・国外を問わず、取得したすべての財産が相続税の対象。

国内財産のみ課税:日本国内にある財産だけが対象で、国外財産は対象外。

納税義務者の区分と課税範囲

区分主な該当者課税範囲
居住無制限納税義務者相続時に日本に住所がある人(下記の一時居住者等を除く)全世界の財産
非居住無制限納税義務者日本に住所はないが、日本国籍があり過去10年以内に国内に住所があった人 など全世界の財産
制限納税義務者上記以外で、日本国内の財産を取得した人国内財産のみ

ポイントは、日本に長く住所がある人や、日本国籍で海外移住して間もない人は「全世界課税」になりやすく、日本との結びつきが薄い人は「国内財産のみ」になりやすい、という設計です。これは外国籍の人だけでなく、海外在住の日本人にも関わります。

「一時居住者」と短期滞在外国人(2017年改正)

就労などで日本に短期間滞在する外国籍の人については、一時居住者という区分があります。

一時居住者とは

相続開始時に在留資格を持ち、かつ相続開始前15年以内で日本国内に住所があった期間の合計が10年以下の人をいいます。

2017年(平成29年)4月1日以降、被相続人・相続人がともに短期滞在の外国人(一時居住者など)である場合、国外財産は相続税・贈与税の課税対象としないこととされました。これは、高度人材を含む外国人が日本で働きやすくする一方、日本に長く根を下ろした人には国外財産も課税する、というバランスをとったものです。逆に、在留期間が長くなって国内住所が10年を超えると、原則として全世界課税の扱いに近づきます。

過度な「国外財産外し」への対応

かつては、海外資産と外国籍・海外居住の相続人を組み合わせて相続税を回避する例が問題視され、たびたび改正が行われてきました。現在は、被相続人・相続人の住所や在留期間に応じて課税範囲が細かく定められています。国際相続は判定が複雑なため、必ず専門家に確認しましょう。

所得税の「非永住者」制度

所得税にも、居住者を「永住者」と「非永住者」に分ける仕組みがあります。

非永住者とは

日本に住所等がある居住者のうち、日本国籍がなく、かつ過去10年以内に日本国内に住所・居所を有していた期間の合計が5年以下の個人をいいます。

非永住者の課税範囲は、国内源泉所得の全部と、国外源泉所得のうち日本国内で支払われたもの・日本に送金されたものに限られます。つまり、海外に置いたままの所得は当面日本で課税されない場合があります。これは外国人材の受け入れを念頭にした制度で、滞在が長くなり永住者になれば、日本人と同様に全世界所得が課税対象になります。

実務での注意点

  • 判定は組み合わせで決まる:被相続人と相続人それぞれの住所・国籍・在留期間を確認する必要があり、自己判断は危険です。
  • 租税条約・外国税額控除:国外財産・国外所得には現地でも課税されることがあり、二重課税の調整(外国税額控除や租税条約)が関わります。
  • 海外資産の評価・申告:国外財産は評価や為替換算、現地の手続きが必要で、国内資産より時間がかかります。
  • 国外財産調書:一定額以上の国外財産がある場合、別途の報告制度があります。

国際相続・国際課税は専門性が高い分野です。海外資産や海外在住の関係者がいる場合は、国際税務に詳しい税理士に早めに相談することをおすすめします。

よくある質問

相続税は国籍で決まる?

いいえ。被相続人・相続人それぞれの住所・在留期間・財産の所在の組み合わせで課税範囲(全世界課税か国内財産のみか)が決まります。国籍は判定要素の一つにすぎません。

海外に住む相続人は日本の相続税がかかる?

日本国内にある財産を取得すれば、海外在住でも国内財産について相続税の対象になります。さらに一定の要件に当たると国外財産まで対象(全世界課税)になります。

短期滞在の外国人同士の相続は?

2017年4月以降、被相続人・相続人がともに在留資格を持つ短期滞在者(一時居住者等)の場合、国外財産は相続税・贈与税の対象になりません。国内財産は対象です。

非永住者は海外の収入を申告しなくていい?

非永住者は、国内源泉所得と、国外源泉所得のうち国内払い・国内送金分が課税対象です。海外に置いたままの所得は当面対象外の場合がありますが、送金等があれば課税されます。

まとめ

課税範囲の決まり方住所・在留期間・財産の所在の組み合わせ(国籍だけではない)
全世界課税日本に住所がある人・日本国籍で海外移住して間もない人 など
国内財産のみ日本との結びつきが薄い制限納税義務者・短期滞在外国人の国外財産
所得税の非永住者国内源泉所得+国外所得の国内払い・送金分が課税
実務判定が複雑。二重課税調整・国外財産調書も。専門家へ相談を

参考リンク(出典)

本記事は次の国税庁の公表資料をもとに作成しています(中立・一次情報)。国際課税は改正が多いため、必ず最新の内容と専門家の助言をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供であり、税務アドバイスではありません。国際相続・国際課税の判断は、国際税務に詳しい税理士・税務署にご相談ください。