消費税を納める課税事業者には、納税額の計算方法が「本則課税(原則課税)」と「簡易課税」の2通りあります。どちらを選ぶかで納税額が大きく変わり、業種によって有利・不利がはっきり分かれます。さらにインボイス制度をきっかけに課税事業者になった人向けの「2割特例」が2026年9月で終了するため、その後どちらを選ぶかの判断も重要です。この記事では、2つの計算方法の違い・みなし仕入率・選び方・届出期限を整理します。
2つの計算方法の違い
実際に支払った経費の消費税をすべて差し引く方式。インボイスの保存など正確な記帳が必要。
経費の消費税を実額で計算せず、業種ごとの「みなし仕入率」で概算。基準期間(2年前)の課税売上が5,000万円以下の事業者が、事前の届出で選択できる。
みなし仕入率(簡易課税の業種区分)
| 事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業・農林漁業(飲食料品) | 80% |
| 第3種 | 製造業・建設業・農林漁業 | 70% |
| 第4種 | 飲食店業など(他に区分されない事業) | 60% |
| 第5種 | サービス業・運輸通信業・金融保険業 | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
※みなし仕入率が高い(=差し引ける割合が大きい)ほど納税額は小さくなります。
どちらが有利?(簡単な目安)
簡易課税が有利になりやすい
- サービス業など経費(課税仕入)が少ない業種
- みなし仕入率より実際の仕入割合が低い
- 記帳の手間を抑えたい
本則課税が有利になりやすい
- 設備投資・大きな仕入がある年
- 赤字や、消費税の還付が見込める
- 実際の仕入割合がみなし仕入率より高い
簡易課税は「売上の消費税」を起点に概算するため、大きな設備投資をしても消費税の還付は発生しません。高額な投資を予定する年は本則課税が有利なことがあります。
インボイスの「2割特例」は2026年9月で終了
インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人は、当面は2割特例(納付額=売上の消費税×20%)を使えます。ただしこの特例は令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までで終了します。
2026年10月以降は本則課税か簡易課税のいずれかを選ぶことになります。あわせて個人事業主向けに「3割特例」の新設も検討されています。簡易課税を選ぶには事前の届出が必要なので、終了前に試算しておきましょう。インボイス全体の整理は インボイス制度と免税事業者 を参照。
届出の期限に注意
簡易課税を選ぶ・やめるには「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」を、適用したい課税期間が始まる前日までに提出する必要があります(個人事業主なら前年12月31日まで)。年の途中で「やっぱり本則に」と切り替えることは原則できず、簡易課税は2年間の継続適用が必要な点にも注意です。
よくある質問
簡易課税と本則課税はどちらが得?
経費(課税仕入)が少ない業種は簡易課税、設備投資や大きな仕入がある年は本則課税が有利になりやすいです。みなし仕入率と実際の仕入割合を比べて試算しましょう。
簡易課税を選べる条件は?
基準期間(2年前)の課税売上が5,000万円以下で、事前に簡易課税制度選択届出書を提出していることが条件です。選択後は2年間の継続適用が必要です。
2割特例はいつまで使える?
インボイスを機に課税事業者になった人向けの2割特例は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までで終了します。その後は本則課税か簡易課税を選びます。
複数の業種がある場合のみなし仕入率は?
事業区分ごとに売上を分けて、それぞれのみなし仕入率を加重平均して計算します。区分が分けられない売上は最も低いみなし仕入率が適用されます。
まとめ
関連コラム
- インボイス制度と免税事業者(登録の判断)
- 個人事業主の開業ガイド
- 法人化のタイミング
参考リンク(出典)
本記事は次の国税庁の公表資料をもとに作成しています(中立・一次情報)。制度・特例は改正されるため、申告前に最新の内容をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、税務アドバイスではありません。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。
