DMMはなぜ合同会社?株式会社から変更するメリットと節税ではない理由

カテゴリ:制度・ニュース

DMM・Apple Japan・Google・Amazon Japan・西友など、誰もが知る企業が「株式会社」ではなく「合同会社」です。DMMは2018年に株式会社から合同会社へ組織変更しました。「格下げ?」と思われがちですが、実は節税のためではなく、コスト削減と意思決定のスピードが狙いです。合同会社は新設法人の約3割(4社に1社以上)を占めるまで急増しています。この記事では、株式会社から合同会社へ変えるメリット・デメリット・手続き・費用、そして「税金は変わらない」という最大の誤解まで、網羅的に整理します。法人化そのものは 法人化のタイミング も参照してください。

法人・会社形態・コスト

なぜ有名企業が合同会社に?(DMMの例)

株式会社から合同会社への変更は「組織変更」と呼ばれ、会社をたたんで作り直すのではなく、同じ法人格のまま形態だけを変える手続きです。法人格は連続しているため、契約・許認可・繰越欠損金・銀行口座なども原則そのまま引き継がれます。

DMM.comは2018年に合同会社へ

DMM.comは2018年5月に株式会社から合同会社へ組織変更し、同年6月にグループ会社と合併しました。狙いは企画・営業・開発を一体化した意思決定の迅速化・効率化で、上場を目指さない方針も背景にあるとされます[ITmedia]

合同会社は2006年の会社法施行で生まれた比較的新しい形態(米国のLLCがモデル)で、外資系の日本法人に多く採用されています。代表的な合同会社には次のような企業があります。

会社特徴
合同会社DMM.com株式会社から組織変更(2018年)。非上場・オーナー系
Apple Japan/グーグル/アマゾンジャパン外資系IT。日本法人を合同会社で運営
合同会社西友大手スーパー。外資傘下を経て合同会社
P&Gプレステージ/ユニバーサル ミュージック外資系。ブランドが確立し信用面の影響が小さい

いずれも「非上場で、すでに知名度・ブランドがある」という共通点があります。ここに合同会社が向く理由が表れています。

合同会社は急増している(4社に1社以上)

合同会社の新設は年々増えています。2015年に約2万社、2019年に約3万社、2023年に初めて4万社を超え、2024年は4万2,107社(新設法人の約3割)に達しました[東京商工リサーチ]。株式会社の新設が頭打ち(前年比減)なのに対し、合同会社は伸び続けています。

合同会社の新設法人数の推移
約2.0万2015年約3.0万2019年約4.0万2023年約4.2万2024年
出典:東京商工リサーチ(2024年の合同会社の新設は4万2,107社・新設法人の約3割)

この図表はPNGで保存でき、出典明記とリンクで自由に利用できます。

背景にあるのは、設立コストの安さ・手続きの簡単さです。とくにインボイス制度をきっかけに個人事業主が法人化する際、設立費用の安い合同会社を選ぶケースが増えています。「珍しい形態だから不安」という時代ではなくなりつつあります。

株式会社と合同会社の違い(一覧)

両者の主な違いを整理します。太字が合同会社に有利な点です。

項目株式会社合同会社
出資者の呼称株主社員(=出資者)
代表者の肩書き代表取締役代表社員
定款認証(公証人)必要(手数料3万〜5万円)不要(0円)
設立の登録免許税最低15万円最低6万円
役員の任期取締役 原則2年(非公開は最長10年)なし
重任登記任期ごとに必要(登録免許税1万円)不要
決算公告毎年義務(官報なら約6万円/年)不要
意思決定株主総会・取締役会など定款自治で柔軟
利益の配分原則は出資(株式)割合に応じる定款で自由に設定可
上場できるできない
資金調達株式・新株予約権で広く調達可出資のみ(株式なし)
持分の譲渡株式譲渡(原則自由・制限可)他の社員全員の承諾が原則必要
社会的な認知度高い株式会社より低め
法人税・社会保険同じ(差はない)

メリット①:コストと手間が減る

合同会社の最大のメリットは、設立時にも、設立後も、お金と手間がかからないことです。

かかる費用株式会社合同会社
定款認証(公証人手数料)3万〜5万円0円
設立の登録免許税最低15万円最低6万円
設立費用の目安(合計)約22万〜25万円約6万〜10万円
決算公告(毎年)必要(官報 約6万円/年)不要
役員の重任登記任期ごと(登録免許税1万円+手間)不要
会社設立にかかる登録免許税(最低額)
最低15万円株式会社最低6万円合同会社
出典:登録免許税法(資本金額×7/1000・最低額)。組織変更時は別途、株式会社の解散登記+官報公告費などがかかります。

株式会社は公証人による定款認証が必要で、その手数料だけで3万〜5万円かかります。合同会社は定款認証が不要です[法務省]。さらに設立後も、株式会社には毎年の決算公告(怠ると100万円以下の過料の対象)と役員の任期ごとの重任登記が必要ですが、合同会社はどちらも不要です。規模が大きくても上場しない会社ほど、この固定的なコスト削減の効果が積み上がります。

メリット②:運営の自由度が高い

合同会社は「定款自治」が広く認められ、会社の運営ルールを自分たちで自由に決められます

  • 意思決定が速い:株主総会や取締役会といった機関設計に縛られず、社員(出資者)の合意で機動的に決められます。DMMが組織変更した最大の理由もここにあります。
  • 利益配分を自由に設計できる:株式会社は原則として出資割合に応じて配当しますが、合同会社は出資比率と関係なく定款で配分を決められます(貢献度の高い社員に多く配るなど)。
  • 役員(業務執行社員)の縛りが少ない:任期がなく、改選・重任登記の手間もありません。
小さな会社・一人会社とも相性がよい

社員が1人だけの「一人合同会社」も設立でき、意思決定はさらにシンプルです。個人事業主が社会保険や信用のために法人化する場合、コストの軽い合同会社が選ばれやすくなっています(マイクロ法人と社会保険料)。

デメリット・注意点

合同会社が向くケース

  • オーナーが1人または少数で、上場を目指さない
  • BtoBや、すでに知名度・ブランドがある
  • 運営コストと手間を圧縮したい

慎重に判断すべき点

  • 認知度が低い。BtoCや採用・取引・融資で不利になる場合がある
  • 上場できない(株式がないため)
  • 株式での資金調達ができない(VC等からの出資を受けにくい)
  • 社員間で意見が割れると決められない(重要事項は原則 全社員一致)

DMMやAppleのように知名度のある会社では「信用低下」のデメリットはほぼ問題になりません。逆に、これから知名度を上げたいBtoC企業や、将来の上場・ベンチャーキャピタルからの大型調達を考える会社は株式会社が向きます。社員間の対立リスクは、定款で議決方法をあらかじめ定めて手当てできます。

最大の誤解:税金は変わらない

合同会社化は「節税」ではありません

株式会社も合同会社も、税法上は同じ「普通法人」です。次のとおり税負担はまったく同じで、合同会社にしても1円も税金は安くなりません。

税・負担株式会社と合同会社の違い
法人税率同じ(中小法人は所得年800万円以下15%・超23.2%)[国税庁 No.5759]
法人住民税の均等割同じ(資本金等と従業員数で決まる。最低でも年約7万円)
消費税・インボイス同じ(2割特例などの適用条件も法人格で変わらない)
役員報酬・社会保険同じ(業務執行社員=役員。社保は強制加入)
中小企業向けの各種特例同じ(少額減価償却・交際費の特例なども共通)

つまり合同会社にするメリットは、税額ではなく、登記・公告などのランニングコストと運営の自由度にあります。実際の節税は会社形態ではなく、役員報酬の最適化経営セーフティ共済などの制度活用で行うものです。組織変更は同一法人の継続のため、繰越欠損金も原則引き継がれます

組織変更の手続き・費用・期間

株式会社から合同会社への組織変更は、次の流れで進みます。1〜2か月程度かかります。

  1. 組織変更計画の作成と、総株主の同意を得る(全員の同意が必要)
  2. 債権者保護手続き:官報公告+知れている債権者への個別催告(1か月以上の異議申述期間)
  3. 株式の処理:株券発行会社なら株券提供公告など
  4. 登記:効力発生日から所定の期間内に、株式会社の解散登記+合同会社の設立登記
かかる費用の目安

登録免許税は、合同会社の設立登記(資本金額×1.5/1000・最低3万円)+株式会社の解散登記(3万円)で最低6万円。これに官報公告費(数万円)司法書士報酬(おおむね5万〜15万円)が加わり、合計で15万〜25万円程度が目安です。

※あわせて、銀行口座や各種契約の名義(「株式会社○○」→「合同会社○○」)、社会保険・税務署への異動届、許認可の変更(種類により再申請)などの実務が発生します。期間に余裕を持って進めましょう。

あとで株式会社に戻すこともできる

「将来、上場や大型調達を目指すことになった」という場合は、合同会社から株式会社への組織変更も可能です。実際、スタートアップが成長して上場準備に入る段階で株式会社化する例もあります。ただし再び登記・公告などの手続きと費用がかかるため、当面の方針に合った形態を選ぶのが基本です。これから会社を新しく作るなら、設立コストの比較は 会社設立の費用 を参照してください。

よくある質問

DMMはなぜ合同会社にしたのですか?

DMMは2018年に株式会社から合同会社へ組織変更しました。狙いは節税ではなく、①決算公告が不要になる(業績を公開せずに済む)②役員の重任登記や株主総会が不要で意思決定が速い③上場予定がなく株式会社である必要がない、というコストと自由度の理由です。AppleやGoogleの日本法人が合同会社なのも同様に、外資の100%子会社にとって株主総会等の維持コストが無駄だからです。

合同会社にすると節税になりますか?

なりません。株式会社も合同会社も同じ普通法人で、法人税・地方税・消費税の扱いは同じです。役員報酬や社会保険も変わりません。メリットは決算公告や役員の重任登記が不要になるなどのコスト・手間の削減と、運営の自由度です。

合同会社は信用が落ちませんか?

取引先や消費者の認知度は株式会社より低めで、BtoCや採用・融資で不利になる場合があります。一方、DMMやAppleのように知名度のある会社では実質的に問題になりません。新設法人の約3割が合同会社になっており、以前ほど珍しい形態ではなくなっています。

組織変更で繰越欠損金や許認可は引き継げますか?

組織変更は同一法人の継続なので、繰越欠損金は原則引き継がれます。許認可は種類によって再申請・変更届が必要なことがあるため、事前に所管官庁へ確認してください。契約や銀行口座も名義変更で継続できます。

手続きの費用と期間はどのくらいですか?

登録免許税が最低6万円、これに官報公告費と司法書士報酬を加えて合計15万〜25万円程度が目安です。債権者保護手続きに1か月以上かかるため、全体では1〜2か月程度を見込みます。

役員報酬や社会保険の扱いは変わりますか?

変わりません。合同会社の業務執行社員は税務上の役員にあたり、役員報酬のルール(定期同額給与など)も社会保険の強制加入も株式会社と同じです。

あとで株式会社に戻せますか?

戻せます。合同会社から株式会社への組織変更も可能です。ただし再び登記・公告などの手続きと費用がかかります。

まとめ

何が変わる同じ法人格のまま株式会社→合同会社へ(組織変更)
コスト面定款認証不要・登記が安い・決算公告/重任登記が不要
運営面意思決定が自由・速い/利益配分も自由
税金変わらない。節税目的ではない
デメリット認知度・上場不可・株式での資金調達不可
向く会社非上場・少数オーナー・コストを圧縮したい会社

参考リンク(出典)

本記事は次の公的情報・公表資料をもとに作成しています(中立・一次情報)。制度・手数料は改正されることがあるため、手続きの前に最新の内容をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務の個別アドバイスではありません。組織変更の判断・手続きは司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。

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公開日:2026年06月20日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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